組込制御技術者のこれから

Society5.0時代到来!組込制御技術の進化を共に!


●これからのIT業界と組込制御技術

 かつて、組込技術者と聞けば、家電製品や通信機器の開発などが連想されたものでした。それは業務系のエンジニアなどとは違った固有の技術を持った技術者だと考えられてきたように思います。そして、双方はまるで別の業界であるかのように、それぞれの仕事をしてきたのです。
 多くの業務系システムエンジニアやプログラマーが生まれ、また、BtoCシステムの増加でWebエンジニアは増え、ビッグデータの普及やマーケティングの成熟化によりデータ分析技術者の需要も増しています。
 しかし、Society5.0と呼ばれる、バーチャル空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)が高度に融合させる社会において、そういった技術分野の差というものは、同じ目的を達成するための手段の差に過ぎず、技術者たちは同じ目的のために、それぞれが持ちうる技術を以って協力し合うことになります。
 それは、互いが互いの需要を生み出す業界、と捉えることもできるのです。この数年の業務系エンジニア需要の急拡大から考えるに、現在構築されようとしている巨大なシステム・社会に呼応するフィジカル空間、それを実現する組込技術者が強く求められ始めていることは必然と言えます。

●今、ITはどういう時代にあるか

 バーチャル空間とフィジカル空間の高度な融合、と言っても、まだ具体的にイメージするのは難しいかもしれません。もう少し手前から考えてみましょう。
情報化社会という言葉が生まれて以降(いわゆるSociety4.0と呼ばれる時代)、
システムは日常生活やオフィス業務における効率化を図る手段として発達を遂げてきました。様々なものを管理するシステムが生まれ、わたしたちの日常業務は変化してきたのです。言い方を変えれば、ITは人間の「仕事の方法」を効率化する技術であったと言えます。
そんなSociety4.0と呼ばれた時代も、過去のものになろうとしています。
 昨今「DX」という言葉が、一般紙や雑誌などの表紙を多く飾りますが、これは「よりデジタル化/IT化が進む」ということを意味しているだけではありません。事業構造を変革するITの活用を指して「DX」と呼ばれているのです。すなわち、これまでの効率化/省人化のためのITではなく、新たな事業を可能にするためのITと捉えた方が正確だと言えます。
 DXについての詳しいお話は別の記事に任せるとして、ここでは、組込・制御という分野に対するDXの影響について、お話します。

 

●本格的なIoT時代の到来

 DXを可能にする技術は数多くあります。
「5G」や「AI」というものもその一つですが、ここでは「IoT」に着目してみましょう。DXが標榜するものに、シームレスなデータ連携というものがあります。これは、これまで断絶、あるいはかろうじて接続していたシステム間を、データというものをベースにして新たなセキュリティ技術を用いて繋ぐ、という意味だけではありません。

 これまでシステムやインターネットを使用してきたのは人間でした。
パソコンやスマートフォンを用いて、我々人間がデータを入力・参照・利用してきたのです。これからは違います。データを生み出すのは、機械、もう少し正確に言うならば、センサーです。
自動ドアや自動照明のセンサーではありません。もっと多くの、ありとあらゆるものがセンサーを備えている社会を創造してみてください。
床のタイル一つ一つ、照明の一つ一つ、それらが常にインターネットに接続し、あらゆる情報を収集します。
収集されたデータはシステムで統合され、解析され、有用なデータとして活用されます。人間の判断といった場面で活用されるとは限りません。自動的に何らかの機械に対して信号が送られ、制御が行われるのです。

●IoTの実用化

 自動車分野におけるコネクテッドカー、街そのものが最適化されるスマートシティ構想、産業界ではスマートファクトリーなどという言葉も聞かれます。これらは、センサーとシステムと制御が実用化される例の一つにすぎません。医療、教育、環境保護、災害、安全保障などありとあらゆる現場で、フィジカルな世界と、バーチャルな世界は繋がり始めます。

●組込開発のこれから

 フィジカルとバーチャルを繋ぎ、あらゆるデータをシームレスに繋ぐ。
それは現在この国が抱えている様々な問題、例えば、少子高齢化/過疎化/貧富の格差などの克服へと向かいます。
 また世界がSDGs(持続可能な開発目標)の達成へと向かうためにSociety3.0や4.0を超克するSociety5.0の実現が求められます。そのような状況から、フィジカルとバーチャルを繋ぐ基礎技術となる組込制御技術の価値が爆発的に高まることは明らかであると、我々は考えているのです。