私たちは幸福なエンジニア人生とは何だろう、と考え続けています。
　皆さんはどのような仕事ぶりや生活をイメージするでしょうか。
　システム開発業界が「多忙で過酷」などと言われてきたことを私たちは知っていますし、私自身そのような状況を経験したことがあるのも事実です。いえ「多忙」に関しては、常にそうだったかもしれません。ただ、現在は異なる様相を見せています。それぞれのプロジェクトは過去の教訓を生かし、よりコントロールされ、様々な安全性が保たれるようになりました。労働時間や仕事内容も計画の範囲の中で行われ、エンジニア達は従来と比較して飛躍的にワークライフバランスを保つことに成功したのだと、私は感じています。業界全体として、より高い生産性を目指し、ある意味ではそれに成功していると言えるでしょう。
　それは素晴らしいことだと思います。
　しかし、実際にプロジェクトの現場を見回した時、ふと気づくことがあるのです。
　片隅に、生き生きと働いていないエンジニアがいるのではないか。
　彼ら彼女らは決して「多忙で過酷」であるために暗く沈んでいるのではなく、ただその仕事を「作業」に感じ、飽きてしまっているのです。

　二十年超に及ぶエンジニア人生を振り返る時、結局私はこの仕事が好きで続けてきたのだと思います。駆け出しの頃は難しくて、自分には向いていないのではないか、と感じたこともありました。少しずつ責任が重くなると、押しつぶされそうにもなりました。それでも私がこの仕事を好き好んで続けてきたのは、忙しかったからだと思います。言い換えるなら退屈ではなかったのです。

　私は決してノスタルジーに駆られているわけではありません。また、仕事中毒になっているわけでもありません。限られた人生の中で、早く時間が過ぎないかなぁ、などと考えて生きたくはない。そんな当たり前のことを感じているのです。
　忙しく働いて誰かの役に立つこと、知らないことを学ぶこと、そして、飽くことなく新しいことにチャレンジすること。多くのエンジニアの幸せは、そういうものだと私は信じています。
　そのために私に手助けできることは、それぞれのエンジニアを「正しい」プロジェクトにアサインし続けることです。

　エンジニアが学ぶべきことは、インターネットや書籍の中だけにあるのではありません。プロジェクト、現場から学んだことで私たちは成長してきました。正確に言えば、トラブルや障害と呼ばれるものから、私たちはより多くを学ぶのです。苦しんで欲しいわけではありません。楽しんで欲しいのです。その仕事に真剣に取り組み、問題を解決し、忙しく働く中で昨日とは異なる自分に変化していくことを楽しいと感じてもらいたいのです。
　一人のエンジニアが経験し感じたことは、決してその人だけの財産ではありえません。共に働くメンバーや後輩、更にまだ見ぬ未来の後輩たちへと引き継がれて初めて、それは技術と呼ばれるものだと考えています。技術を掲げ、システム開発を担う会社として、そのようなサイクルをより大きなものにする必要があります。成長する会社とはそういうものです。

　社内においては、プロジェクト化を推し進め、プロジェクトからエンジニアへ、個々のエンジニアからエンジニアへの継承を進める。継承するのは、技術的な知識だけではなく、マネジメントの仕方や、コミュニケーション方法、そして、厳しさの中で楽しむということでなければならないと思います。プロジェクトの成功を約束するプロジェクトマネージャーの擁立、チームの成果を最大に出来るリーダーや、後進を育成し導くことの出来るエンジニアの育成、そして皆が「それぞれの幸福なエンジニア人生」というものを次の世代に話してくれること。それが私たちの永遠のテーマです。

　一度お会いして、皆さんがどういうエンジニア人生を送ってきたのか、お聞かせください。
　そして、どういうエンジニア人生を送っていくのか、話し合っていきましょう。
　幾つものプロジェクトの中で「幸福なエンジニア人生」を一緒に見つけましょう。



　株式会社インフロント　西日本ソリューション部　部長　阿部 悟